中間言語と言語変異:KYコーパスを使った「を」格ゼロマーク化の分析

松田 謙次郎


近年Bailey & Preston (1996)に見られるように、変異理論的枠組みによる 中間言語変異の分析が盛んになって来つつある。第2言語習得という観点 を取り入れることにより、制約条件のありようについて第1言語習得、第 1言語変異や言語普遍性・個別言語の特殊性と組み合わせた仮説設定が可 能になる。本稿ではKYコーパスを用いて韓国語母語話者の日本語発話に見 られる「を」格ゼロマーク化現象の分析を行い、松田 (1995, 2000) に報 告されている第1言語変異との比較を試みた。「を」格ゼロマーク化には、 言語普遍的要因(目的語名詞句形式差)とともに、日本語(東京語)個別 的な要因(目的語名詞句と動詞の隣接性、スタイル差)も絡むが、KYコー パスの韓国語母語話者データの分析からは、このうち目的語名詞句形式差 のみが統計的に有意な要因として検出された。さらに日本語習熟度別の分 布からは、習熟度の上昇に従って、この要因のレベルの分布が母語話者の それに接近するという傾向が認められた。とりわけ普通名詞>f 代名詞とい う差は、すでに中級レベルから習得されている事実は、第1言語変異と第 2言語習得における言語普遍的要因の役割という点から大いに注目に値す る。

 
英文要約
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